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発達障害(自閉スペクトラム症 ASD)の治療薬ってあるの?

更新日 2021.10.17 療育・治療


自閉症スペクトラム障害(Autism Spectrum Disorder: ASD)、注意欠如多動性障害(AttentionDeficit/Hyperactivity Disorder: ADHD)、そして(限局性)学習障害((Specific) Learning Disorder: LD)の3つの代表的な障害の総称である発達障害は脳の機能障害ですが、そのメカニズムのすべては解明されておらず、ADHDそのものを完治させる治療法は、現在のところ確立されてはいません。

また、ADHDの症状は個人差が大きく、ひとくくりにすることもできません。そのため、治療のポイントとなるのは、療育を通じて可能性を広げたり、環境を整えたりして本人の困りごとを軽減させることです。ADHDの治療において薬物治療は補助的な役割を担っています。

主な治療薬 

ADHDは先天的な脳の機能障害です。その症状は個人差が大きく、成長とともに特性に変化が見られます。そのため、根本的な治療が難しく、環境調整をしたり、本人や保護者がトレーニングを受けたりして、症状と上手くつきあうことに重点を置いて治療が進められます。

不安が強くて新しい環境に馴染めない、興奮してじっとしていられないといった症状が出ていると、治療を進めるのが難しくなります。脳の興奮を静めたり、気持ちを落ち着けたりする働きがあるお薬を用いることで、治療を円滑に進めることができます。

脳内環境を整えるための治療薬(主な商品名)

・アトモキセチン(ストラテラ):主にノルアドレナリンの再取り込みを抑えます。

・メチルフェニデート(コンサータ):主にドパミンおよびノルアドレナリンの再取り込みを抑えます。12時間程度で薬効が切れるため、学校や仕事など日中の活動に合わせて服用、休薬を計画します。

・グアンファシン(インチュニブ):ノルアドレナリンの神経受容体であるα2A受容体を選択的に刺激し、シグナル伝達を増強させます。

・リスデキサンフェタミン(ビバンセ):脳内におけるドパミンおよびノルアドレナリンの働きを調節します。

併存している症状に薬を用いることも

米国精神医学会により2013年に発行された精神疾患の診断・統計マニュアルであるDSM-5では、ADHDと自閉症スペクトラム症との併存が認められるようになりました。自閉スペクトラム症が原因でADHDの特性が見られたり、その逆があったりと、生活の上での困りごとが良く似ています。そのため、ADHDの特性だけでなく、併存している症状も含めた治療を行います。

・眠りが浅い、過眠傾向があるなどの睡眠障害がある場合には睡眠薬が有効です。

・てんかんの症状がある場合には、抗てんかん薬が用いられます。

・偏食によって成長が著しく阻害される場合、栄養補助剤を用いることがあります。

治療計画は、その人の特性や生活環境によって異なるため、必ず医師の指示に従ってください。

注目される漢方やアロマテラピー

ADHDの特性は、薬で抑えることはできても完全になくすことはできません。そのため、長い期間にわたって薬を飲み続ける必要があり、体への負担が懸念されることもあります。また、「神経の興奮を抑える薬を摂取すると、ぼーっとして立つことができない」といった反応が出て、日常生活を送ることが難しくなる場合もあります。

そこで、漢方やアロマテラピーを治療に取り入れる試みがなされています。

漢方は自然の草や木から取った生薬で、体への作用は穏やかです。ADHDの治療には抑肝散、抑肝散加陳皮半夏が使われます。

・抑肝散:神経の高ぶりを抑え、また、筋肉のこわばりやつっぱりをゆるめて、心と体の状態を良くし、イライラ感や不眠などの精神神経症状、あるいは、手足のふるえ、けいれん、子どもの夜なき、ひきつけなどに適応します。

http://www.interq.or.jp/ox/dwm/se/se52/se5200139.html

・陳皮:リラックス効果、血流の改善が期待できます。

・半夏:嘔気、嘔吐を抑える効果、水分の停滞や代謝異常を改善します。 

アロマテラピーでは、主に精油が使われます。精油はエステルや多価アルコールで、揮発性が高い芳香物質です。

・ラベンダー:リラックス効果が高く、神経の高ぶりを抑え、睡眠の質を高める効果があるといわれています。

・ベチバー:注意力を高め、集中力の維持に効果が期待できます。

・ローマンカモミール:ストレスや不安を和らげる作用があるといわれています。

アロマテラピーは、香りを楽しむ他に、マッサージや入浴に利用することもできます。人によっては、香りそのものが苦手なこともあるため、その場合には使用を中止しましょう。

漢方やアロマテラピーは、組み合わせ方によって効果が高まったり、半減したりします。薬との相性があるため、必ず専門家の指示に従って使用しましょう。

その他の対症療法

・運動:運動によって、ADHDの特性や気分の落ち込みの緩和が期待できます。また、適度な運動は睡眠の質の改善にもつながります。8週間のヨガプログラムを受けたADHDの子どもたちに特性の緩和が見られたという研究結果もあります。

・カウンセリング:ADHDの特性を持つ方は、自分の行動が周囲に認められない、同じ失敗を繰り返してしまうなど、自己肯定感が低くなりやすい傾向にあります。また、考えがまとまらず、頭の中で思考がこんがらがってしまうこともあります。このような時に、寄り添って話を聞いてくれる相手がいることは、とても心強いものです。

現在は、精神科や心療内科だけでなく、カウンセリングルームやオンラインカウンセリングがあります。カウンセリングを希望する場合は、ASD分野に精通したカウンセラーを選びましょう。

一人ひとりの状況に合わせた選択を

ADHD、ASDの対処法は複数あり、一人ひとりの状態に合わせた療育や治療を行うことにより、可能性を広げ、生活の困りごとを減らすことができます。

【参考】

https://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/drugdic/article/556e7e5c83815011bdcf827c.html

伝統医学臨床セミナー抑肝散の応用https://doi.org/10.3937/kampomed.62.479

医療としての「アロマテラピー」の可能性を探る:吸入による芳香性生薬類の作用 伊藤  謙、伊藤美千穂、高橋 京子 日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)140,71~75(2012)

https://www.msdmanuals.com/

Modification of sleep-waking and electroencephalogram induced by vetiver essential oil inhalation 2016 Dania Cheaha,la

Effects of an 8-week yoga program on sustained attention and discrimination function in children with attention deficit hyperactivity disorder Chien-Chih Chou and Chung-Ju Huang

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