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発達障害「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」と3つの介入方法 

更新日 2021.9.20 支援

発達障害「ADHD(注意欠陥・多動性障害)」と3つの介入方法 

「授業中、席を離れて走り回る」「片づけられない」「順番を待つことが苦手」など、ほかのお子さんと比べて落ち着きがなく、不注意や衝動性の問題が目立つのがADHD(注意欠陥・多動性障害)です。

ADHDのお子さんは忘れ物が多かったり、学校のルールを守れず生活や学業に支障をきたしたり、友だちとトラブルになるということも少なくありません。この記事では、ADHDのお子さんへの3つの介入方法を紹介します。

1章 ADHD(注意欠如/多動性障害)とは? 

ADHD(注意欠陥・多動性障害)は、「不注意」と「多動性・衝動性」を特徴とする発達障害のひとつです。脳機能の発達や成熟にかたよりが生じた結果と考えられていますが、原因はよくわかっていません。

学齢期のお子さんの約5%がADHDと考えられており、遺伝的な素因や周産期の問題、環境要因などが複雑に関連して症状が現れるといわれています。

ADHDの診断ポイントとは

ADHDの診断はアメリカ精神医学会のDSM-5に示されており、条件が全て満たされたときに診断されます。おもな診断基準は次のとおりです。

  1. 「不注意」と「多動性・衝動性」が同程度の年齢の発達水準に比べて頻繁に強く認められる
  2. 症状のいくつかが12歳以前より認められる
  3. 2つ以上の状況において、家庭や学校、職場、その他の活動中などに困難が認められる
  4. 発達に応じた対人関係や学業的・職業的な機能に困難が認められる
  5. その症状が、統合失調症または他の精神病性障害の経過中に起こるものではなく、他の精神疾患ではうまく説明されない

ADHDの診断は、医師が観察した行動上の特徴に基づいて行われますが、その特徴だけで診断ができる確立した医学的な検査はありません。また、一部の神経疾患や身体疾患、不安定な子育ての環境などが、ADHDとそっくりの症状を引き起こすケースもあります。そのため、小児科や小児神経科、児童精神科の医師による医学的評価も非常に重要です。

ADHDのお子さんの困難とは

ADHDのお子さんは、意識的な症状の予防や軽減が困難です。本人の意図とは別に、どうしてもじっとしていられない、学校で必要な持ち物を忘れたり、失くしたりする……などの失敗行動が起きてしまいます。

こうした失敗行動に対し、学校や家庭で厳しく叱られると「どんなにがんばってもうまくいかない」という否定的な自己イメージを持ちやすく、家庭や学校でつらい想いをしているお子さんも多くみられます。

さらに、ADHDを持つお子さんは学業不振や対人関係で悩むだけでなく、気分が落ち込んだり、不安感をコントロールできなくなったりなど、「うつや不安障害といった二次障害」を併発することもあります。二次障害は周囲の理解やサポートで回避、または軽減できる場合もあります。

お子さんの生活の上での困難さや二次障害を防ぐためにも、家族や周囲の人がその特性に早く気づいて対処することが大切です。

2章 知っておきたい3つの介入方法  

ADHDのお子さんへの介入方法として効果が高いとされるのが「環境への介入」「行動への介入」「薬物療法」などの組み合わせです。

1.環境への介入

お子さんの特性を理解して、生活環境を暮らしやすいものにしましょう。例えば、学校の教室では、机の位置や掲示物などを工夫して、本人が少しでも集中しやすい環境にする物理的な介入方法も有効です。また、勉強や作業を10分から15分など、集中できそうな最小単位の時間に区切って行う時間的介入法もおすすめです。

2.行動への介入 

行動への介入では、「好ましい行動をほめて増やしていく」ようにします。具体的には、お子さんの行動のうち好ましい行動をしたときには「ほめる」という報酬を与えます。逆に不適切な行動はできるだけ見逃すようにして、過剰な叱責をしないうえに報酬を与えないなど、好ましい行動を増やそうという介入方法です。

例えば「じっとしていない」という行動には、「座っているときにほめる」「静かにしている時間の長さをほめる」「生活の中で動いても良い時間を作る」といった対応があります。好ましい行動をほめて、成功体験を積み重ねていくことが大切です。

報酬を得点化し、達成できたら特別なご褒美やイベントへの参加(遊園地に行く、旅行に行くなど)につなげるのも効果的です。こうした介入方法は保護者を対象とした「ペアレントトレーニング」で学ぶことができます。コロナ禍においても、eラーニングを利用したトレーニングを提供している専門機関もありますので手軽に活用してみてはいかがでしょう。

3.薬物療法

ADHDの治療薬としては、3種類の薬が許可されています(2018年11月現在)。これらの薬は、症状の特徴やライフスタイルにあわせて選択されています。

メチルフェニデート徐放錠(コンサータ)は、脳内のドパミンという神経伝達物質の働きを調整する働きがあります。この薬剤は、ADHDの不注意・多動性・衝動性を軽減する可能性があるとして保険適用されていますが、登録された医師や専門医療機関でのみ処方が可能です。その他、アトモキセチン(ストラテラ)、グアンファシン(インチュニブ)が健康保険の適用となっています。また、お子さんの示す症状に応じて、抗うつ薬、気分安定薬や向精神薬などが使用される場合があります。

適切な行動を増やそう

ADHDのお子さんの治療には「環境」「行動」「薬物」といった3つの介入を組み合わせることが有効だといわれています。一人で落ち着いて過ごせる場所があれば、興奮したときも集団から離れて気分を落ち着かせることができ、気持ちの切り替えができます。また、好ましい行動をしたときには、家族や身近な人から「すごいね」とほめられると、適切な行動が増えていくでしょう。

成功体験を重ねることは、本人の自己評価を高めることにつながり、うつや不安障害などの二次障害を防ぐことにもなります。そのためにも、家族や周囲の人はADHDの特性をよく理解して、適切な環境をつくることが重要なのです。

<参考>

・国立精神・神経医療研究センター「ADHD(多動性症候群)」

https://www.ncnp.go.jp/hospital/

・ながうしクリニック

 http://www.n-ushicli.com/mentalsupport/developmental-disorder.html

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