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アスペルガー症候群の特徴的なコミュニケーション

更新日 2021.10.7 発達障害とは

アスペルガー症候群は発達障害の特性の一つです。なお、「アスペルガー症候群」という診断名は、2013年以降「自閉スペクトラム症(ASD)」に統一されています。本記事では、一般的に使われることが多く、症状をイメージしやすい「アスペルガー症候群」を使用します。

アスペルガー症候群は、自閉症の特性である社会的関係の困難さと、興味や関心が限定的で特定のものにこだわりが見られる行動障害のうち、知的発達の遅れと言葉の遅れを伴わないものを指します。知的発達や言語の遅れがないため、障害特性が分かりにくく、周りから浮いてしまうことも少なくありません。


①相手の立場に立つことが難しい 

中枢神経系が上手く働かず、対人的な情報を自動的に絞り込むことが難しいため、人の表情や言葉よりも、見た目や出来事の詳細に関心が向いてしまい、相手が置かれている立場を理解したり、相手に共感したりすることが苦手です。

そのため、次のような言動が見られます。

・思ったことを口にする

初めて会った小柄で眼鏡をかけている人に、「小さいね。眼鏡は似合いません」と、自分が感じたことをそのまま発言してしまいます。このような発言が相手にどのような影響を与えるのか、相手が自分に対してどのような気持ちを持つのかを理解しながら話すことが苦手です。

・言葉をそのまま受け取る

お風呂のお湯を溜めているときに、「お風呂を見てきて」と伝えると、風呂を見るだけで戻ってしまうことがあります。「お風呂を見てきて」には、「お風呂の様子を見に行って、お水が湯船のふちから10cm下のところまで溜まっていたら、蛇口をひねって、お湯を止めてね」といった意味が含まれますが、はっきりと言語化されていない部分が分かりにくく、言われた言葉をそのまま受け取る傾向があります。

・杓子定規(ルールに強いこだわり)

話す順番やあいさつ、言葉の使い方に強いこだわりを示すことがあります。「おはよう」を使っても良い時間は何時から何時までと決まっていたり、話すときには、「です・ます調」で話したり、その人なりのルールがあります。

・人の気持ちを汲むことの困難さ
長年大切に飼っていたペットを失くして悲しんでいる友人に対して、「生き物は寿命がきたら死ぬよ」「私は動物が嫌い」など、相手の「悲しい」気持ちを理解することが苦手です。目に見える出来事を優先して理解するため、状況は細部まで理解していることが多いです。

②話し方の特徴 

・年齢に見合わない言葉遣い

4歳児が、「私の考えは…」と話し始めたり、遊びを遊戯、おもちゃを玩具のように、一般的にその年齢では使わないような難しい表現をしたりすることがあります。話し方に抑揚がなく、ニュースキャスターがニュースを読むように話す人もいます。

方言や話し言葉を用いないことも多く、正しい日本語に対するこだわりが感じられます。

・自分の興味のある分野について話出したら止まらない

鉄道や植物など、自分が興味を持っていることについては、百科事典をまるまる記憶しているのではと思えるほどの知識で、一方的に話すことがあります。一説によると、この行動は、自分が理解していることを言葉にすることで整理しているともいわれています。

・表情やジェスチャーが乏しい

アスペルガー症候群の特性を持つ人の中には、雑談が苦手な人が目立ちます。たわいものない会話や、目的のない会話を苦痛と感じる人もいます。彼らは、どちらかといえば、事実を伝えるために話をする傾向が高いため、表情やジェスチャーを使って相手に分かりやすく伝えることよりも、事実に即した内容を伝えることに重点を置きます。そのため、表情や状況が分かりにくいことがあります。

③細部までこだわる 

曖昧さが苦手で、白黒はっきりさせたい思いが強く、人が話をしているときに、その話の真偽や自分が気になることを、人の話をさえぎって逐一確かめることがあります。

例えば、「寝坊したからダッシュで会社に来ましたよ。信号が全部、青だったのでラッキーでした」と話す同僚に対して、「信号は緑です。あなたは信号が青に見えますか?」と言ってしまい、相手が怒ってしまうということもあります。

・逐一話す

出来事を思い出しながら話をするときに、実際に起こった出来事を逐一たどりながら話をする人が多く、話が冗長になりがちです。「今日、学校どうだった?」と聞かれて、「〇時何分に先生がこんなことを言って、誰と誰が笑っていた」といった具合に、起こった出来事を事細かに覚えていて、それを順に話す傾向があります。

④成長するにつれ、自分の特性とうまく付き合えることが増える 

もともと、アスペルガー症候群の特性の一つに高い学習能力があります。中には、ギフテッドと呼ばれる高いスキルを持つ人もいます。そのため、「相手の気持ちを理解することはできないけれど、こんな表情をしたときには、このように対応する」と学習を繰り返すことで、上手く対人関係を築くことができるようになります。

自分が興味を持つ分野に対しての学習も深まるため、特定の分野で深い知識や技術を身につけて、世界で活躍する人もいます。

⑤まとめ

人の気持ちに共感したり、表情豊かに話をしたりすることが苦手な特性を持つ人たちの話し方は、時に、他者に違和感などを覚えさせることがあります。しかし、彼らに悪気があるわけではありません。むしろ、一生懸命伝えようとするあまり、周りくどくなってしまうこともあるのです。このような特性があることを理解することで、アスペルガー症候群の特性を持つ人への理解が深まります。

参考文献

http://forum.nise.go.jp/soudan-db/htdocs/index.php?key=mu2ww0z4w-476

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