更新日 2021.3.24 診断
乳幼児健診から発達検査・療育手帳の交付まで
乳幼児健診は正式名称を「乳幼児健康診査」といいます。母子保健法に基づいて行われる検診で、1歳6ヶ月児健診と3歳児健診が市町村に義務付けられています。乳幼児健診で確認されるのは、身体の発育状況、予防接種、栄養状態などですが、発達の状況も健診項目に入っています。乳幼児健診で発達の遅れを指摘されるのはこのためです。
それぞれの乳幼児期の特徴と、発達検査の内容、また、どのポイントで発達に偏りがあると指摘されるのかをまとめました。
1歳6か月という年齢は親だけでなく周囲にも興味を持ち、対人関係能力が育まれていく時期です。そのため、1歳6か月児健診では、大人の動作を真似る「模倣」、親の指差しを追う「共同注意」と呼ばれる項目などが観察されます。これらの検査を通じて、社会性やコミュニケーションの発達に弱さを持つ傾向が指摘されることもあります。
この年齢で発達がゆっくりな場合、人の目を見ることが少ない、指差しをしない、ほかの子どもに関心がない、などの様子がみられます。
3歳は行動範囲も広がり、いろいろな人に会い、周囲から刺激を受ける時期です。3歳児健診では、親からは子供の会話の様子、特定のものへの強いこだわりや、注意・集中、多動性があるかなどについて聞き取ります。同時に、子どもに対しては名前や年齢などの質問に対する応答のほか簡単な発達検査を実施することもあります。健診会場でのほかの子供とのかかわり、あるいは親子の様子を観察する場合もあります。
この時期に発達の偏りがあると、一人遊びが多く集団行動が苦手など人との関わり方が独特、会話がつながりにくい、また、一方で電車やアニメのキャラクターなど自分の好きなことや興味のあることには毎日何時間でも熱中する特徴があります。
これらの項目を検査することで、自閉スペクトラム症(ASD)の症状である、強いこだわりや人との関わりの偏り、注意欠陥・多動症(ADHD)の症状を検査するのはもちろん、知的な遅れ(知的能力障害)を発見することにつながります。
乳幼児健診で発達の偏りがみられると、保健師らの経過観察が行われます。
保健師らが家庭を訪問するほか、フォローの健診などにつなぎます。また、発達がゆっくりな子どもを集めた教室を案内することもあります。市町村が主催することが多く「子育て教室」「ペアレント・トレーニング」「遊び方教室」など、遊びを通して親子のコミュニケーションを促し、育児の知識を共有することができます。
教室に通うメリットは、保護者が子供への接し方を学べる、ほかの保護者と交流し情報・意見交換ができる、また、多くの人の中に入ることで、子供の偏りに気づくことができるなど、があげられます。フォロー健診や子育て教室に参加する中で子供の様子を観察し、発達の偏りが個人の差の範囲であると、保健師らが判断すれば次の乳幼児健診に確認するようにします。
フォローの健診や子育て教室での子どもの様子を観察し、より支援が必要と判断された場合、次のステップにつなげることになります。そして、将来的に療育手帳の取得が必要と判断されると行政の窓口を案内されます。
「療育手帳」とは、都道府県などの自治体が、知的障害児・知的障害者に交付する手帳です。自閉スペクトラム症(ASD)などの発達障害があり、知的障害を伴う場合は療育手帳を取得することができます。療育手帳の制度は、法で定められた制度ではありません。各自治体の独自制度のため、障がいの程度の区分やサービス内容も自治体で違いがあります。
療育手帳を利用することで、税金の減免、公共料金の割引、交通運賃の割引など、経済的な負担を軽減できるほか、発達障害者とその家族にとって必要な福祉サービスが受けやすくなります。
療育手帳は、障害の程度や知能指数によって判定されます。
1⃣市町村の窓口に申し込む
2⃣心理判定員・小児科医による面接、聞き取りが行われる
3⃣行政により区分が決定され、該当すれば療育手帳が交付される
東京都の場合、1⃣の手帳交付の申し込み予約はすぐに一杯になり2、3か月待ちのときもあります。また、初回面談はおおむね3時間かかります。判定をする心理職や医師は自治体指定で、相談の中で行政から案内されます。18歳未満は児童相談所、18歳以上は知的障害者更生相談所などです。発達障害の程度は心理判定医や小児科医がIQや日常動作をみて総合的に判定します。
行政よっては発達専門の医師が出張で発達を見てくれる巡回相談など、子供の発達のレベルに合う機関へとつなぐこともあります。
子どもの成長・経過観察は時間が必要、ということは多々あります。また、各自治体によって保健師らの担当者の役割等が違い、保護者にとっては「説明不足」「待たされる」と感じられる場合があります。
発達障害において、医療の役割はとても大切です。しかし、発達障害の支援センターと医療の連携に課題があります。「発達障害者支援法の改正について」(厚生労働省)では、発達障害専門機関と医療機関の連携がうたわれていますが、一方で専門人材の確保が記載されており、十分な連携のできる専門性の高い人材はまだ不足しています。今後、支援機関と医療機関が連携し、保護者らに的確な情報を提供するための専門人材を増やすことが必要です。
乳幼児健診も療育手帳の交付も行政が行います。しかしながら、行政は支援に必要とされる情報のうち民間サービスについては情報を持っていない、あるいは持っていても、案内しづらいことが考えられます。
先が見えない中で小さな子供を育てることは大変なことです。保健師などの担当者や公共の相談所・窓口に情報を求める他、インターネットで調べるなど、積極的に情報を集めましょう。
療育施設探しなどのお困りのごと、マンツーマンでお答えします。