更新日 2021.3.24 発達障害とは
「会話のやりとりや感情を共有する」「年齢に応じた対人関係を築く」「自分の感情をコントロールする」などが上手にできない、発達障害のお子さんがいます。
こうした発達障害の中でも、ひとり遊びが多く、こだわりが強いなどの特徴がある「自閉症」「高機能自閉症」「アスペルガー症候群」を総称して、自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害:ASD)と呼びます。自閉症は、先天的な脳の中枢神経の障害であり、心の病気ではありません。この記事では、自閉スペクトラム症のそれぞれの特徴や診断基準、サポートの方法などを紹介します。
2013年のアメリカ精神医学会の診断基準DSM-5の発表以降、自閉症、アスペルガー症候群などを総称して、自閉スペクトラム症(自閉症スペクトラム障害)と表現するようになりました。それぞれの特性や現れ方はお子さんによって違いがあります。
一般的に「自閉症」は言葉の遅れや知的障害をともない、強いこだわりを持ち、人とのコミュニケーションをとることが困難という特徴があります。「アスペルガー症候群」は知的な発達に遅れはありませんが、人とのやりとりが苦手で、活動や興味の範囲が狭いなどの特徴がみられます。また「高機能自閉症」も、知的な発達に遅れはありませんが、言葉の遅れや対人関係の難しさ、活動や興味の狭さなどの特徴があります。
自閉症やアスペルガー症候群は、広汎性発達障害の1つです。その他にもレット障害や小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害などがあります。
自閉スペクトラム症の診断はDSM-5に記載されています。次の条件を満たしたときに診断されます。
自閉スペクトラム症のお子さんは、「コミュニケーションの障害」と「興味や行動への強いこだわり」という2つの特徴をあわせ持っています。どちらか1つだけでは診断されません。
自閉スペクトラム症は、3歳までには症状が出現するとされています。発症年齢が遅く、診断基準を完全には満たさない場合は「非定型自閉症」と診断されます。1960年代以来、自閉症の発症率は1万人に4〜5人という数値が定説でしたが、近年、自閉症の診断を受ける幼児の数は急増しています。
自閉スペクトラム症のお子さんには、「ひとり遊び」「視線回避」「あやしても笑わない」「抱っこしにくい」などの特徴があります。就学後は一時的に安定することもありますが、知的水準や言語の遅れによりパニックが生じ、睡眠障害がみられることもあります。
高学年になると体力が強くなるため、家庭や学校での対応が難しくなるケースがあります。また自閉スペクトラム症のお子さんは、友達からいじめを受けるなどのトラブルも少なくありません。気になる行動がある場合は、行政機関など専門の相談窓口を利用しましょう。
お子さんに対するサポートの基本は「療育」と呼ばれるものです。療育は発達支援センターなどの公的な施設をはじめ、民間の施設でも独自のプログラムが提供されています。適切なサポートによって集団活動のルールを学び、コミュニケーション能力を身につけます。
家族のサポートでは、お子さんの「いいところ」を見つけて、積極的にほめて自信を持たせることが効果的です。また、極度に興奮した場合は、別の場所に移動して落ち着くのを待つ、気分の落ち着くグッズを用意するなどの対応が考えられます。
自閉スペクトラム症のお子さんは、周囲の人から叱られたり、友達から仲間外れにされることがあります。そのため、不安障害などの二次障害を起こしやすくなります。こうした二次障害を防ぐためにも、早期の適切なサポートが必要です。
発達障害のお子さんは、自分を取り巻く状況やさまざまな物事が、定型発達者と呼ばれる発達障害ではないお子さんとは同じように脳に伝わりません。結果としてコミュニケーションの困難さ、特定の物事へのこだわりが現れるという障害です。家族や周囲の人は、治さないといけないと思うのではなく、お子さんの「特性」と捉えて、お子さんにあったサポートの方法を見つけていくことが大切です。