更新日 2021.9.30 生活
ADHDの症状は個人差が大きく、ひとくくりにすることはできませんが、話し方が一方的、話があちこちに飛びやすいなど、ある程度共通する話し方の特徴があります。
今回は、筆者が実際に出会ったADHDの人達の会話をご紹介します。
ADHDの子ども・大人別の特徴と会話例
1.ADHDの子どもの会話の特徴
ADHDの子どもには、一つのことに夢中になりすぎて話しかけても返事がない、一度話出すと、相手の反応はおかまいなしに話を続けるといった特徴があります。
一方で、話しかけてから反応をするまでに長い時間が必要な場合もあります。
子どもの頃は、まだコミュニケーションが何なのかを理解していないことが多く、呼ばれたら返事をするというような日常会話での決まり事や、他者には他者の考え方がある(自分と同じではない)ことを理解していない場合が多く、自分が考えることは他人も同じ考えであると捉えがちです。
2.ADHDの子どもの会話例
それでは、ADHDの子どもの会話例を見ていきましょう。
【ADHD 5歳児Aくんの会話】
初めて訪れた公園で、初めて出会うお友達がブランコで遊んでいるのを見て…
子:「(ブランコに近付いて) つぎ、ぼくのばんね。」
お友達:「いやだよ~。」
子:「ぼくもいっしょにあそびたいのに、なんで入れてくれないの!!」
ADHDの子どもは、同年代であっても、知らない人に急に話しかけられるとびっくりしてしまうことや、相手に 拒否する気持ちがあることへの理解が不十分なことがわかりますね。続いて、もう少し年齢の高い子どもの会話を見ていきましょう。
【ADHD小学3年生Bさんとお母さんの会話】
子:「今日こけて足をすりむいて保健室に行ったけど先生がいなかったから、
他の先生にばんそうこうをもらっ た。そのあとね…」
母:「すりむいた所はだいじょうぶだった?」
子:「そのあと給食でプリンが出たからめっちゃ嬉しかった」
母:「いま、足は痛く…」
子:「うん でね、昼休みに縄跳びしてね二重飛びが5回もできたよ」
母:「足の傷を見せて」
子:「足をけがしたのはぼくじゃないよ」
こちらの会話では、主語や話の切れ目が分かりにくく、言いたいことを一気に話す傾向が強いのがわかります、また、会話のキャッチボールが成立しにくいのも特徴といえるでしょう。
他にも、楽しかったことや嫌だったことなど、自分が感じたことをすべて声に出して表現する子どもや、公の場などで、話したい衝動を我慢していた反動で、急におしゃべりが止まらなくなる子どももいます。
一方で、話すのが苦手で会話が続かない場合もあります。
もともと話すことが苦手な子もいますが、中には「話している意味が分からない」「うるさい!」など、本人にとって不本意な対応をされてしまったことが重なり、話すことに自信を無くしてしまったという場合もあるようです。
1.ADHDの大人の会話の特徴
大人になると、成長の段階で様々な経験をしたことにより他者とのコミュニケーションを学び、上手く対応できることが増えます。また、子どもに比べると活動量が少なくなり、ADHDの特徴の一つである多動が見えにくくなるため、同じ人であっても、子どもの頃と大人になってからでは、話し方の印象が大きく変わることがあります。
しかし、ADHDそのものがなくなることはなく、不注意・多動性・衝動性は存在しています。そのため、話に集中できずに話題が飛びやすい、早口で声が大きいといった話し方の特徴がみられます。
2.ADHDの大人の会話例
ではさっそく、ADHDの大人の会話を見ていきましょう。
【社会人2年目、ADHDのCさんの会話】
上司 「Cさん、昨日頼んだ書類できてる?」
Cさん「はい。大丈夫です。あれからずっとその書類作っているんですけど、
情報集めが進まなくてデータが揃ってないんです。
なので、もっと分かりやすい資料があればいいと思って探していたんです。
そしたらDさんがコーヒーをいれてくれて、そのコーヒーが
めちゃくちゃおいしかったんです。課長はブラジル好きですか?」
この会話例のように、ADHDの人は、質問に答えずに話が長くなりがちです。
その理由の一つに、何かを思い出すときに、「すべての場面が頭の中で再生される」という現象があることが挙げられます。加えて、注意散漫になりやすく、思い出された場面に関することに注意が向くと、話が脱線して結論になかなかたどり着けなくなるといった特徴も。
例のやり取り中、Cさんの頭の中では、書類作りに取り掛かるところから再現され、再現される中で、美味しいブラジル産のコーヒーを飲んだことを思い出し、上司にブラジルは好きか尋ねるに至ったと推測できます。
大人になると、会社や趣味のサークルなど、組織に属する機会が増えます。組織は、共通の目標を達成するために力を合わせて行動する人たちの集まりですので、内輪のルールや、暗黙のルールができやすいです。またそれらは、属する組織によって、敬語での会話が主になる場合や、年齢に関係なくフランクな会話が求められる場合など、コミュニケーションの形が変わるため、ADHDの特性を持つ人にとって過ごしにくいと感じることがあります。
一方で組織は、学校や家庭よりも自由度が高く、ADHDの特性を理解している(しようとしている)人が多いことから、ADHDの会話の特徴が目立たなくなる、特徴をいかして活躍できる場面が増えるといったメリットもあるでしょう。
コミュニケーションが取りにくいと感じる場合は、専門家に相談してみよう
ADHDの人も、そうでない人も、お互いに理解したいと考えている人はたくさんいます。自身のコミュニケションの特性や特徴・癖などを理解し、他者とより良いコミュニケションを取れると良いですね。
ADHDはコミュニケーション障害と混同されがちですが、医学的にみると両者は違うものです。ADHDであるのか、コミュニケーション障害であるのかによって、治療や対処法が異なりますので、他者とのコミュニケーションの取りにくさを感じる場合は、専門家に相談することをおすすめします。