更新日 2021.4.14 生活
※「発達障害」とは。日本では、広い括りの「発達障害」がよく聞かれるのではないでしょうか。発達障害には、自閉症の他に、「注意欠如・多動症(ADHD)」や「限局性学習症(いわゆる学習障害)」などがあり、はっきりと診断には至らないものの何らかの発達的困難があるグレーゾーンも含めると、その数は全体の10%にのぼるとも言われます。診断基準の改定などから、医学分野では「神経発達症」という新しい名称で呼ばれることもありますが、ここでは一般によく聞かれる「発達障害」と表記します。
新型コロナウィルス感染症の影響が長引く中、発達障害がある子の家庭を取り巻く状況はどう変わったでしょうか。筆者の所属するNPO法人ADDSでは、2021年3月に、12歳までの発達障害あるいはその疑いのあるお子様のいる保護者1037名(有効回答1028名)を対象に全国アンケート調査を行いました。その結果をご紹介していきます。
「コロナ禍で、お子さまの発達に関する状況について変化がありましたか?」という質問では「困った行動が増えた」が34.8%、「発達の遅れや偏りについて気になることが増えた」が27.1%、「親の精神的負担が増えた」が25.0%など、64.2%の保護者の方々が、「子供を取り巻く状況が悪化した」と回答しました。(図1参照)
また、46.4%の保護者が「お子さまの発達について相談したい気持ちが強くなった」と回答するなど、コロナ禍において生活様式が変化したり家庭で過ごす時間が長くなることで困りごとが増え、相談ニーズが高まっていることが伺えます。(図2参照)
一方で、「コロナ禍で相談することについて困難がありますか?」という質問には「対面での相談枠が休止・縮小されて、相談予約が取りにくい」が35.8%、対面での相談がしづらい、したくないと感じる」が33.6%など、67.6%の保護者の方々が「お子さまの発達について相談する環境が悪化した」と回答しました。(図3参照)
相談ニーズはあっても、感染拡大防止の観点から、そもそも相談枠が縮小されたり、小さな子どもを連れて相談へ出かけることには不安がある保護者の方も多いようです。
コロナ禍で、困り感は増大する一方、相談や支援機関に繋がりづらい状況は、親子の孤立や、発達の機会損失、また虐待などの様々なリスクにも繋がります。コロナの影響がまだ暫く続きそうな状況を踏まえると、相談枠の拡充やオンラインツールなども活用したサポートがもっと広がることが必要ではないでしょうか。
さらに、「相談したい、相談しやすいと思う方法について」の質問では、コロナ禍においても「実際に会って対面で相談する」が53.9%で最も高く、相談枠の縮小や感染防止の観点と、対面の安心感との間の葛藤が浮き彫りとなりました。次いで「オンラインで対面相談する」が40.0%であり、対面で得られる安心感・信頼感の代替手段として、オンラインで「会って」話す方法には期待がもてると言えるでしょう。(図4参照)
また、相談先にのぞむことは、「専門家に相談したい」が42.6%と全体の多くを占めました。(図5参照)
さらに、これまでに何らかの相談機関に相談した経験についての質問で、相談の満足度は「満足」が30%、「やや満足」が51%と比較的高いものの、「不満」「やや不満」の回答も19%となり、その理由としては、「具体的なアドバイスがもらえなかった」が57.3%、「発達の状況について専門的な見解がもらえなかった」が47.4%となり、専門的な観点からの具体的な助言を求める声があるようです。(図6・図6-1参照)
上記「不満の理由」の中に、「相談予約から実際の相談までに時間がかかった」という意見も32.2%に上りました。実際、「相談に向けて動き出した日から、相談ができた日まで、どのくらい時間がかかりましたか」という質問には、「1か月以上」との回答が全体の42.5%を占め、中には「6か月以上」という回答も10.4%存在。早期発見や早期支援の重要性が強調される一方で、支援機関などにつながるまでにかなりの時間を待たされている親子の実情が数値として示されました。(図7参照)
このような状況を受け、各自治体や公的な支援機関、民間の事業者なども、様々な工夫を凝らして、コロナ禍で困惑する親子の支援を続けています。少しずつではありますが、LINEやZoomなどのオンラインツールを導入する試みも出てきています。
kikotto運営団体ADDSは、コロナ禍の混乱の中、2020年6月よりオンライン発達相談サービスの開発を進め、ベータ版を多くの方にご利用いただき、2021年4月から本リリースをしました。お子様の発達について気になることを、気軽に専門家に聞いてみたい保護者の方は、是非アクセスしてみてください。
発達障害は、「障害」という言葉への社会的イメージから、ネガティブで受け入れづらいと感じる方が多いかも知れません。しかし、周囲から理解されず、特性と環境とのミスマッチに本人や家族が困り感を抱える状況が続くと、虐待やいじめ被害、身体症状、精神症状、不登校や自傷・他害行為などの二次障害を引き起こすリスクもあり、早期の気づきとその子の特性に合ったサポートが重要といえます。実際には、一人ひとりがとてもユニークで可能性に満ちた人たちで、特性に合った周囲の関わりや教育的サポートにより、その良さを発揮しながら大きく成長する子どもたちがたくさんいるということを誰もが当たり前に理解し、互いに支え合う社会へと変わっていけたらと思います。
この記事を書いた人:ADDS理事 竹内弓乃