オンライン発達相談サービス

文字が上手く書けない

更新日 2021.9.5 時期ごとの悩み

知的な遅れや視覚、聴覚に問題がなく、学習環境が整っているにもかかわらず、話す、読む、書く、計算するまたは推論する能力のうち、特定の分野の習得と使用に著しい困難を示す状態を学習障害といいます。学習障害の中でも、特に書くことに困難さがある場合、書字障害(ディスグラフィア)と分類されます。何度も練習しているのに正しく文字が書けなかったり、鏡文字になったり、文字そのものが書けなかったりするなど、その症状はさまざまです。

【ディスグラフィアの特徴】

書くことの困難さには個人差がありますが、次の4つの特徴は多くの方に見られる特徴です。

①文字の書分けが難しい

「お」と「よ」、「さ」と「き」のように、見た目が似ている文字をかき分けることが苦手です。ひらがなに限らず、カタカナや漢字、アルファベットでも同じ症状が見られます。マス目や罫線に沿って文字を書くことも苦手です。文字がすべて鏡文字になることもあります。

②促音(そくおん)や拗音(ようおん)を書き表すことができない

「キック」を「キク」、「きゅうきゅうしゃ」を「きうきょしぁ」のように、小さい「っ」や「ゃ、ゅ、ょ」を正しく書き表すことが苦手です。

③話し言葉を書き言葉で表すことが難しい

「王様」は「おうさま」が正しい表し方ですが、日常的には「おおさま」と発音します。このように、話している言葉と書き言葉が異なる場合に、正しい書き言葉で表現することが難しいことがあります。

④漢字の意味が理解しづらい

歌う人のことを「歌手」と書くべきところを、「火手」のように、同じ音を持つ漢字を当てはめて書くことがあります。

【ディスグラフィアの原因】

すべての原因が解明されてはいませんが、現時点でディスグラフィアの原因と考えられているのは、次の4つです。

①注意欠如

注意が散漫になりやすく、文字を見落としたり、文字の細部の認識に困難があったりするため、文字の形を理解しにくいと考えられています。ADHDの特性を持っている方は、注意欠如の特性が強いため、ディスグラフィアを併発するケースが多く見られます。ディスグラフィアが軽度の場合は、「字が汚い人」と認識されることもあります。

②発達性協調運動障害

目で見た文字を書き写す、耳で聞いた音を書き表すなど、それぞれの感覚器官が連携する動作が上手くいかないことで、ディスグラフィアが起こります。

発達性協調運動障害は、知的発達、視覚、聴覚、筋肉などに異常がないにもかかわらず、その年齢で求められる動きがスムーズにできない状態で、周囲からは、「ものすごく不器用な人」と思われがちです。また、文字を書く以外の日常の動作(ボタンをかける、スキップをする)にもぎこちなさが見られることもあります。

③音韻処理不全

「犬」の話をしているときに、「い・ぬ」と文字を分け、「い」と「ぬ」という音が連続で発せられた場合、それらの音は「犬」であると結びつけるスキルが充分に発達していない場合、音を文字として書くことが難しいことがあります。

④視覚過敏(視覚処理不全)

視覚が敏感なため、文字を見ることや文章を読むことが難しく、文字の形を認識することも難しい状態です。この場合、文字を読むことが難しいディスレクシアが併存している可能性が高くなります。

【ディスグラフィアの対処法】

・何よりも大切な対処法は、書けないことを責めないこと

ディスレクシアの特性を持つ方は、わざと汚い字を書いているわけではないのに、周りの人たちから、「字が汚い」「いつも漢字を間違える」と言われることが多く、文字を書くことに自信が持てなくなっています。このような状態でさらに責められると、文字を書くことがもっと怖くなり、文字を練習する機会も減ってしまいます。

・教育現場に合理的配慮を求める

書くことは義務教育期間の学習において中核を担っています。授業のノートを取る、テストを受けるといったさまざまな場面で書くことが求められます。しかし、書くことが苦手な場合、書くことに疲れてしまい、学習についていけなくなることもあります。そうなる前に、PCやタブレットを使って、手書き入力しなくても良い方法を取り入れると、学習を楽に進められるようになります。どのような方法が良いかは、本人の状態や、受け入れる学校の設備によっても異なるため、入学前や進学時に事前に相談をするのが良いでしょう。

・なぜ文字が書けないのかを明確にする

対処法の基本は、できることに目を向けることですが、文字が書けない原因がはっきりすることで対処がしやすくなります。発達性協調運動障害が原因であれば、文字を書く練習だけでなく、スムーズに全身を動かすトレーニングを取り入れることで、文字を書く動作もスムーズになります。音韻処理不全の場合は、言語聴覚士とトレーニングをしてから文字の練習をすると文字を書くストレスが軽減されるでしょう。

【一人一人に合った学習方法を】

書字障害は書くことに困難さがある障害ですが、書くことが上手くいかないために、書くこと以外のことにも自信が持てなくなることがあります。できないところだけでなく、できる部分にも目を向けて子どもの成長をサポートすると、自信を持って、色んなことに挑戦できるようになります。最近は、一人ひとりの個性に合わせた学習を提供する民間教室やオンラインサービスが増えているため、その子に合ったサポートの方法を相談するのもおすすめです。

参考文献

https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-03-004.html 

LD の認知機能─英語圏と日本語圏の読み書き障害の認知的背景要因─ 小池 敏英、中 知華穂 児童青年精神医学とその近接領域 58( 2 );227─235(2017)

専門家にすぐ聞ける。
ちょこっと聞ける。

kikottoマガジン kikotto相談
kikotto