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発達障害のための勉強法 ADHD編

更新日 2021.9.1 生活

発達障害の人が抱える問題の一つに、学習の困難さがあります。具体的には、本人は一生懸命にやっているのに、周りから遊んでいるように思われたり、頑張っても上手くいかない経験をしたりして勉強から遠ざかってしまう、などということがあるようです。

しかしそれは、発達障害だから勉強ができないのではなく、一般的な学習方法が合っていないことがほとんどで、その人に合った方法が見つかれば学習が大きく進む可能性があります。

今回は、発達障害の中でも、ADHDに注目した勉強法をご紹介します。

ADHD3つの症状と学習の関係

ADHDの症状は個人差が大きく、その症状が一つだけ目立つ場合もあれば、複数が組み合わさっている場合もあります。それぞれの症状の特徴を知り、症状に合わせてできる工夫を組み合わせることで、よりその人に合った勉強法に出会うことができるでしょう。

ここでは、ADHDに見られる「不注意」「多動」「衝動性」の3つの症状別におすすめの勉強法を紹介していきます。

1 不注意について

不注意(集中困難)の主な症状

  • 少しの刺激でそちらに注意が向いてしまう
  • 期日を守ることが難しい
  • 忘れものが多い、ものをすぐに失くす
  • 単調な作業が苦手
  • 順序立てて行動できない

不注意傾向が強い場合に見られる学習の困りごと

少しの刺激で集中が切れて、別の方向へ気持ちが向いてしまいがちです。その上、忘れものが多く、期日までに宿題をすることが難しいため、「できない子」と見られてしまうことも。また、単調な作業や繰り返しの作業が苦手なので、漢字(筆順)や九九など、繰り返し学習が必要な分野が特に苦手な傾向にあります。

不注意傾向が強い場合の勉強法

勉強をする前に、光や音を遮断する、テレビやゲームのある部屋での勉強をさけるなど、注意を散漫させない工夫をすると良いでしょう。イヤーマフで音を、パーティションで視線を遮断するのも良い方法です。

また、勉強を始めてから、消しゴムやノートが無いといった状況になると、それらを探すことに気を取られて集中力が切れたり、探しているうちに勉強することを忘れてしまったりすることも。そうなると勉強に取り掛かかりにくくなるので、勉強をする前に、しっかりと準備をしておくことも大切です。

2 多動について

多動(じっとしていることが困難)の主な症状

  • 食事中や授業中にじっと座っていることが苦手
  • 手遊びをしたり、足をバタバタ動かしたりする
  • 一方的に話す、話題が次々と変わる

多動傾向が強い場合に見られる学習の困りごと

座っていることが苦手で、常に体のどこかが動いているため、集団での学習の場で過ごすことが難しく、学習の機会が狭まることがあります。また、言葉が多すぎたり、話が飛んでしまい、自分の考えを他者に上手く伝えられずにイライラしたり不安を感じたりします。

多動傾向が強い場合の勉強法

一般的には、イスに座って静かに勉強することが良いとされていますが、多動傾向が強い場合、じっと座っていること、体を動かさないこと自体がストレスとなり、勉強に集中しにくくなることがあります。そのため、体を動かしながらや、音や映像を使って勉強するのもおすすめです。

3 衝動性について

衝動性(思い付きを抑えることが困難)の主な症状

  • 気持ちや思いがすぐに行動となる
  • 順番が待てない
  • 物事にのめり込みやすい

衝動性が強い場合に見られる学習の困りごと

気になることがあると、考える前に体が動いてしまいます。

これは、本人がそうしようと思っているわけではなく、脳の機能障害が原因なのですが、勉強中に立ち上がったり、大きな声を出したりするため、やる気が無いように見られることがあります。また、物事にのめり込みやすいため、長時間ゲームを続けてしまい勉強時間がなくなる、特定の分野の学習以外はやらないなどの行動も見られます。

衝動性が強い場合の勉強法

行動をコントロールすることが難しく、遊びをやめて勉強に向かうこと、勉強中に他のことへの興味を抑えて勉強に集中することが苦手です。

対策として、あらかじめ、何時になったら何分間勉強すると予定を立て、その通りに行動するトレーニングをしておくと良いでしょう。動的な刺激を好む傾向にありますので、ゲームのように次々と刺激を与えてくれる勉強法が合うことが多いです。

次は、ADHDの方たちの学習効果を上げる具体的な方法をご紹介します。

ABAを取り入れたアプローチ

人の行動を個人だけの問題と捉えるのではなく、環境との相互作用の結果と捉えることで、望ましい行動を増やしたり、問題を解決したりするアプローチをABA(応用行動分析)といいます。

発達障害のある子どもは、環境を理解し、そこから自然に学ぶことが苦手なので、環境側の刺激を子どもが理解しやすいものに変えて、子どもの学びを促します。

ABAは研究成果に基づいた手法で、発達障害の子どもの療育だけでなく、スポーツやビジネスの場など、幅広い分野で取り入れられています。

ABAでは、望ましくない行動に対しては反応しないようにし、良い行動をしたときにすぐに褒めます。こうすることで、何が良いか悪いかが分かりやすく、それにより良い行動が増えていきます。

たくさん褒められると自信もつきますので、目標となる行動を細分化して、成功しやすい環境を整えておくことも重要です。

  

ADHD以外が原因の可能性もある

ADHD以外にも、LD(局限性学習障害)や発達性協調運動障害が、勉強の妨げになることがあります。読む、書く、話す、聞く、計算する能力のうち、どれかが極端に苦手である場合はLDが疑われます。また、字がとても汚い、鉛筆やお箸を上手に使えない場合は、発達性協調運動障害の可能性があります。

どちらも、専門的なトレーニングや本人に合った補助具を使用することで、学習環境を改善することができます。

勉強がなかなかはかどらない場合は、専門機関に相談してみましょう

学ぶためのトレーニングを始めると、その人に合った勉強法は、学生時代だけでなく、日常生活や職場でも役に立ちます。その時々の本人の症状や困りごとを総合的に判断し、長い目で見ることが大切です。

特に、今回ご紹介したABAを使ったアプローチは、年齢が低いほど効果が高いことが分かっています。また、子どものそばにいる保護者が実践者となることで、より高い効果が期待できるでしょう。

なかなか勉強がはかどらない…という人は、ぜひお子さまに合った勉強法を見つけて取り入れてみてください。それでも上手くいかない場合は、別の原因の可能性もあります。

そんなときは一度、専門機関に相談してみましょう。あなたに合った別のやり方を一緒に考えてくれるはずです。

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