オンライン発達相談サービス

自閉症を含む発達障害(ASD)のリスクが高い赤ちゃんの特徴

更新日 2021.10.3 発達障害とは

自閉症を含む発達障害(以下ASD)の原因そのものはまだ確定されていません。しかし、赤ちゃんの行動研究や脳の研究の発展により、そのリスクを早期に発見できる可能性が高まっています。

社会的なコミュニケーションの障害、反復的な行動様式が主な特徴であるASDは、誕生時にその特性に気付くことは難しく、その特性に気付くまでに数年かかることもありますが、多くの場合、早く対応することで、子どもが社会で生活するスキルを身につけやすく、二次障害を予防することにもつながります。

①運動の発達

生まれたばかりの赤ちゃんの体重は約3,000グラム、身長は約49cmです。その後、1年で体重は約3倍、身長は約1.5倍に成長します。その間に、内臓、骨、関節、筋肉、神経なども発達します。一般的には(定型的な発達では)体が大きくなるとともに、その体を支えるために骨や筋肉も発達しますが、ASDリスクが高い場合、身体の発育に筋肉の発達が見合わないことがあります。

身体的な発達には外部からの刺激が大きく影響します。視覚からの刺激や触った感覚などの外部の刺激は、脳に送られ、処理された後、筋肉に命令を伝え、運動(反応)が起こります。そのため、刺激が多ければ、たくさんの運動が起こり、筋肉の発達が促されます。

ASDのリスクが高い赤ちゃんの場合、外界への興味が少ないことから、外部からの刺激が少ないため、筋肉の発達が遅れる場合があります。また、低緊張児の7%に自閉症の傾向が見られたとの研究(愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 発達障害研究所公開シンポジウム2009 自閉症・発達障害の基礎と臨床)もあり、筋肉の発達の遅れと自閉症には関連性があることが分かります。実際に、後にASDと診断された赤ちゃんの保護者さんの多くが、抱っこをした時に「体がふにゃふにゃ」であったと感じています。

②脳の発達

感覚器からの刺激が脊髄に到達して折り返す「反射」を経て、視覚や聴覚、温度や痛みを感じる体性感覚が発達し、思考や情緒(高次脳機能)をつかさどる前頭前野へと、下位脳(首側)から上位脳(頭頂)に向けて脳は発達します。おおむね3歳ごろまでに脳の発達はほぼ完了し、その後は、視覚、聴覚、触覚などから得る刺激をもとに、さらに脳は発達を続け、おおむね20歳ごろまで発達し続けます。

https://www.unicef.or.jp/library/sowc/2001/pdf/haku1.pdf

赤ちゃんの口におっぱいを近づけると乳首を吸うのは反射の一つです。反射によって乳首を吸うことを繰り返すうちに、より上手に乳首を吸う方法を習得し、3か月を過ぎるころには、空腹を満たすためではなく、さみしい時におっぱいを吸うといった感情を伴った行動が見られるようになります。

反射は、生まれながらに持っている生きていくために必要な動きで、反射を繰り返しながら動きを覚え、その動きを習得すると反射は消滅します。そのため、本来見られるはずの反射が見られない、または、反射が消滅する時期に反射が残ってしまう場合、脳機能に何らかの障害があることが疑われます(身体的な障害がある場合を除く)。

また、神経発達の障害によって生じる「感覚鈍麻」や「感覚過敏」も、ASDのリスクが高い赤ちゃんに好発します。

③心の発達

生まれたばかりの赤ちゃんの心は、興奮を感じることから始まり、快、不快を感じるようになり、快の感情は得意、愛情などに分化しながら発達します。

https://rhino.med.yamanashi.ac.jp/sukoyaka/pdf/mama_communi.pdf 情緒の分化)

心の発達は、運動機能や思考にも大きく関係します。目に見えるものに興味を持ち、触りたい、口に入れたいと思う気持ちは、赤ちゃんの体を動かします。その結果、筋肉や骨の発達を促します。さまざまなものに触れることで、ものの違いについて考えたり、新しいものへの興味が生まれたりします。

ASDのリスクが高い赤ちゃんは、心の発達がアンバランスな場合が多く、ものへの興味が極端に弱い、もしくは強いといった特徴が見られます。

新しいおもちゃに全く興味を示さない、特定のおもちゃでしか遊ばないなど、赤ちゃんが遊ぶ様子を見てASDでは?と気付いた保護者さんが多くいらっしゃいます。

④1歳未満でASDの早期診断は可能か

一般的な発達と照らし合わせることで、発達の遅れや進み過ぎに気付くことはできますが、成長の個人差が大きいため、発達の凸凹が個人差なのか障害なのかを見極めることは難しいのが現状です。しかし、医療技術の発展に伴って脳の働きを「見える化」することができるようになり、脳の特性を早い段階で診断することができるようになりつつあります。

日本では、金沢工業大学、金沢大学、リコーグループが小児専用MEG(脳磁計測システム)を開発し、早期発見、早期介入を実現しています。(https://jp.ricoh.com/about/empowering-digital-workplaces/initiatives/scanning-the-individuality-of-the-brain/ リコーHP)

2017年にNatureで発表された論文(Heather Cody Hazlett, Ph.D. J. Piven et al. Early brain development in infants at high risk for autism spectrum disorder DOI: https://doi.org/10.1038/nature21369)では、生後6か月から12か月に得られた脳画像データを元にして人工知能に予測させたところ、生後24か月の時点で、ASDの陽性的中率は81%という結果が得られました。

脳画像解析を用いた診断は、検査をする子どもの気分によって結果が左右されることが少なく、より確実な結果が得られる診断方法であると注目されています。

⑤気になるサインがあったら

ASDの症状は幅が広く、個人差があります。しかし、早い段階で対応することで予後が良くなることは、これまでの研究で明らかです。気になるサインがあった場合には、早めに専門家にご相談ください。

専門家にすぐ聞ける。
ちょこっと聞ける。

kikottoマガジン kikotto相談
kikotto