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知的な遅れはないのに勉強ができない

更新日 2021.8.16 進学

できることに目を向けて

日常生活はほぼ問題なく送っているのに、ひらがなが読めない、漢字が書けない、簡単な計算ができないなど、多くの子どもが「あたりまえ」にできることができない……それは学習障害と呼ばれる症状かもしれません。学習障害には、知的な遅れはないのに、聞く、話す、読む、書く、計算や推論をするといった特定の分野で困難が目立つといった特徴があります。一つの分野のみに困難さが目立つ場合もあれば、複数の分野で困難さが目立つ場合もあり、その程度にも個人差が見られます。知的な遅れを伴わないため、日常生活を送ることに不便さを感じることは少なく、文字の読み書きや計算が本格的に始まる小学生の頃に、その困難さに気が付くケースが多くみられます。

1 学習障害ってなに? 

1-1 主な3つの症状

学習障害は、読みに困難さがある識字障害(Dyslexia ディスレクシア)、手書きで文字を書くことに困難さがある書字障害(Dysgraphia ディスグラフィア)、数的な概念の理解のしにくさや推論することに困難さがある算数障害(Dyscalculia ディスカリキュリア)、の3つの症状に分けられます。これらの症状が見られる場合でも、知的障害や、視覚、聴覚などの疾患による影響を受けていると判断される場合は、学習障害とは分けて考えられます。また、これらの症状は、それぞれ単独で見られることも、複数の症状が同時に見られることもあります。

1-2 DSM-5による分類と立場による捉え方の違い 

学習障害は、最新の「DSM-5精神疾患の分類と診断の手引」において、限局性学習障害(Specific Learning Disorder:SLD)と称されることとなりました。これは、学習障害が学習全般に見られるものではなく、「学習の一部分に限って」困難さが見られることを表しています。また、医療的な立場と教育的な立場では、学習障害に対する捉え方に違いがみられます。医療現場では症状に焦点を当てた「Specific Learning Disorder(極限性学習障害)」、教育現場では、学習の機能面に焦点を当てた「Specific Learning Disabilities(極限性学習機能障害)」や、学び方に焦点を当てた「Learning Differences(学び方の違い)」 など、学習障害には複数の捉え方が存在しています。

1-3 学習障害の診断基準 

①知能検査で遅れが確認されていない。

専門機関において知能検査を行い、知的な遅れが確認されていないことが必要とされます。

②適切な学習環境が整っている。

その子の年齢や発達に見合った学習の機会が提供されていることが前提となります。

何らかの理由で、子どもに学習の機会が与えられず生じた学習の遅れと、学習障害は区別されます。

③視覚や聴覚、四肢など、身体に問題がない。

学習障害は中枢神経系の機能障害が原因であり、視覚、聴覚、運動機能などの障害が直接の原因となるものではありません。

学習障害の診断の際には、上記3つの条件をクリアしているうえで、学習に困難が生じていることを確認し、さらに複数回の行動観察を経て総合的に判断されます。

2 学習障害にどう対応する?

2-1 その子の「困難さ」を知る 

多くの場合、保護者だけでなく子ども自身も、「日常生活に支障がないのに、なぜ自分は勉強ができないのか」と学習の困難さに不安を感じています。まだ幼い子どもにとって、その想いを説明することは簡単ではありません。また、学習障害を持つ子どもには知的発達に遅れがないため、日常生活に支障がないことがほとんどです。そのため、本人は一生懸命に取り組んでいるにも関わらず、勉強が嫌でふざけているように見られたり、できないことを隠すために学習から離れてしまったりすることがあります。このような子どもの行動には、「できるようになりたい」という気持ちが隠れています。

2-2 できることに目を向ける 

学習障害は、学習する能力が低い障害ではありません。学習の方法が多くの人と異なっているという状態です。したがって、学習障害への対応で最も効果的なものは、その子にあった学習方法を見つけることです。

「お話を聞くことは苦手だけど文字を読むことは得意」である場合、話す内容を文字にして読むことで理解できます。「文字が上手に書けないから書きたくない」のであれば、パソコンで文字を書く方法を身につけることで解決します。できることが増えると、褒められたり、認められたりすることが増えます。自分の取った行動が良い結果に結びつくことで、その行動が強化され、さらに発展する基盤となります。

2-3 可能性を広げる 

できることを伸ばすことで、可能性を広げたAちゃんの事例をご紹介します。

Aちゃんは小学校高学年の時に学習障害があると診断されました。幼少期から、「め」・「ぬ」、「シ」「ツ」のような似た文字を読み分けたり、書き分けたりすることが苦手で、学年が上がると、「語」・「話」・「読」のように同じ部首を持つ漢字の識別が困難であることが目立つようになりました。Aちゃんは、中学校の授業で英語と出会って以来、英語が大好きになり、語学分野で推薦を得て高校へ進学。その後、海外の大学で日本の歴史を学び、現在は海外で働いています。

Aちゃんは、中学生の頃を振り返って、次のように話してくれました。

「日本語は、ひらがな、カタカナ、漢字があって、全部が混ざりあっているので分かりにくかったけど、英語はアルファベットだけなので理解しやすかったと思います。他の教科を英語で勉強するようになって、どんどん理解できるようになったので面白かったです。」

その子に合った学びを実践することで、可能性は大きく広がります。

3 まとめ

治療すれば治る病気やケガとは違い、学習障害の症状は生涯にわたって持続します。その程度も症状も個人差が大きく、対応の方法も千差万別ですが、どのように対応するかによって、その後の経過は大きく異なったものとなります。学習障害に気が付いたら、なるべく早い段階で、その子にあった学習の方法を見極め、子ども自身が将来にわたって学習障害(SLD)とうまく付き合っていけるようなサポートが必要です。

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