学生セラピスト部の3名が語る、支援活動を通じての学びと成長
特定非営利活動法人ADDSの「学生セラピスト部」では、学生たちが実際のセラピーや支援活動に携わりながら、専門知識と実践力を養っています。今回、3名の部員にインタビューを行い、彼らがどのようなきっかけで部活動を始め、どのような経験を積み、そしてどんな成長を遂げてきたのかを伺いました。
セラピー現場での貴重なエピソードや、支援活動を通じて身につけたスキル、難しさに直面した際の乗り越え方、そして将来への展望まで、部員たちのリアルな声が明らかに。これから学生セラピスト部に参加しようと考えている人に向けてのメッセージも紹介します。
Q1. ADDSの学生セラピスト部に入ったきっかけを教えてください。 |
K.Y.さん 発達障害の支援を学びたかったから。 |
M.S.さん KDDSの先輩の紹介。また、色々な人と関わりたいと思っていたこと、誰かではなく目の前のお子さんのサポートをしたいと思っていたこと。 私の妹は少し発達に特性があり、両親が苦労している姿や、通じ合えないもどかしさ、不安を感じている姿を小さい頃から近くで見てきました。そのため、小学生の頃から漠然と発達障害に興味がありましたが、中学生になり、仲の良かった友達の不登校がきっかけで、自分に何もできない事実を悔しく思うと同時に、れっきとした障害であるのにも関わらず学校でそのことが認められていないことを疑問に思うようになりました。またその際に、法が変わった上で、一人ひとりに向き合わないと結局その子の周りの対応は変わらないことを教わり、実体験も踏まえ自分で目の前のお子さん、そしてご家族の方のサポートをしたいと思うようになりました。学生セラピスト部は一人ひとりに向き合う機会であると感じ、入部を決めました。 |
T.K.さん 大学で所属している発達障害児支援のサークルで学生部の紹介を受けたことです。 |
Q2. ADDSの学生セラピスト部で自身が取り組んだ活動をいくつか教えてください。 |
K.Y.さん 事業所勤務、家庭訪問セラピー、ボランティア |
M.S.さん 荻窪事業所に勤務。 |
T.K.さん 事業所に勤務、ボランティアコースでの活動 |
Q3. 活動を通して、どのようなスキルや知識が身についたと感じますか? |
K.Y.さん 発達障害の支援やABAの知識だけではなく、発達障害の捉え方やより良い環境を整えていくための工夫を学ぶことができた。学生部で様々な立場の人の意見を聞くことが出来よかった。 |
M.S.さん ABAの知識。療育を実践する力。保護者の方とのコミュニケーションスキル。 |
T.K.さん 実践を通じてABAの知識がより深く身についたと思います。お子さんだけではなく、保護者・きょうだい児と関わることで、発達障害児を取り巻く環境への理解が深まりました。 |
Q4. 実際のセッションや支援で印象に残っているエピソードはありますか? |
K.Y.さん 要求が少なかったお子さんが、欲しいものを適切に相手に教えてくれた時。(指さしや欲しいものの名前をいう) |
M.S.さん 半年ほどのケースを終えた後、お子さんからお手紙をいただいたこと。一緒にひらがなを練習していたため、一生懸命に書いてくれてたであろう姿が思い浮かび心が動かされました。 |
T.K.さん お子さんができなかったことができるようになった瞬間です。具体的には、担当していた際にあまり言葉の表出のなかったお子さんが、半年ぶりくらいに見かけたら自分から様々な語句を発するようになっていて、とても嬉しかったし、自分のセラピーもこの子の成長の一助になっていると実感できました。 |
Q5. 活動の中で難しさを感じたこと、それをどう乗り越えたか教えてください。 |
K.Y.さん 環境整備が上手くできず、離席を多くしてしまった時。自分も支援しやすい環境づくりをしたり、お子さんが何が原因で離席してしまうのかを考えることで、より良い支援につなげることができる。離席が多かったお子さんの着席時間が徐々にのびていくことも嬉しかったです。 |
M.S.さん トークンを用いた療育でお子さんを惹きつけ続けること。ABAの基本に立ち返り、分かりやすい教材提示、正答したらすぐに強化を徹底しました。 |
T.K.さん こちらの指示に対して、拒否をするお子さんにどう対応するか検討することが難しかったです。スタッフの皆さんと相談して、対策としては、そもそもの活動をその子が楽しくできるようなものに変更したり、「○○ちゃんならできるよ~」などその子が指示を聞きたくなるような工夫をしたりするようにしました。 |
Q6. セラピーや支援の現場に関わることで、自分の考え方や価値観に変化はありましたか? |
K.Y.さん ありました。発達障害をもつお子さんの周りの環境次第で大きく変わってくることを改めて実感しました。環境や周りの方の考え方の大切さを学んびました。 |
M.S.さん 机上の勉強では分からない療育の難しさを痛感し、KDDSで療育などについて議論する際に実践可能かをしっかりと考えるようになりました。また、お子さんと向き合われている保護者の方の愛の大きさや偉大さを改めて認識しました。 |
T.K.さん 今までは、障害者支援と考えた際に、障害当事者や社会という広い部分にしか着目できていませんでしたが、学生部に入って保護者と関わるようになったことで、ご家族にどういった支援をすべきか・できるかという視点を持てるようになりました。 |
Q7. チームとして活動するうえで大切にしていることは何ですか? |
K.Y.さん 会える機会が少なく、オンラインでの活動が多かったため、こまめな連絡のやりとりやすれ違いがないようにしました。また、方針が決まった際は理由や留意する点を参加していなかった人も分かるように記載すること(今後の活動のためにも)。 |
M.S.さん 感謝や謝罪を言葉にして伝えること。分からないことを分からないままにしないこと。 |
T.K.さん 報連相。同じお子さんを担当している人同士での引継ぎや、ヒヤリハットの共有、お子さんに関わる上で疑問点はその場で聞くなど、困ったことはできるだけ抱え込まずに、周囲にいる経験豊富なスタッフの皆さんに相談をするようにしています。 |
Q8. 将来的に、この経験をどう活かしたいと考えていますか? |
K.Y.さん 私はこの活動を通して自分の知識やスキルの不足を感じました。そのため、さらに知識を深めたいと思いました。 |
M.S.さん ASDのメカニズムの研究をしたいと考えており、その際に、この経験を活かして当事者の方々の存在を意識できる人になりたいと思っております。研究の際には細胞ばかりをみることになりますが、その先にあるお子さん(当事者の方々)の存在こそが研究のスタートでありゴールであることを忘れないでいたいです。 |
T.K.さん 障害のある方と実際に関わる業務に従事したいので、直接的にABAの知見を役立てられると思います。また、保護者の方からの引継ぎやFBで得た傾聴の姿勢を役立てたいです。 |
Q9. ADDSの活動やセラピスト部を、他の学生にも勧めたいと思いますか?その理由は? |
K.Y.さん 思います。発達障害の支援についての勉強になるだけではなく、お子さんと関わることの楽しさや、学校学部の違う人の意見を聞くことでさらに自分の価値観を広げるきっかけになるからです。私は学びといった側面だけではなく、本当に楽しい思い出のひとつにもなりました。 |
M.S.さん 勧めたいと思います。多様性についてなど様々な知見が得られるだけではなく、様々な方との関わり方が学べ、時にはお子さんに励まされたりと素敵な経験が沢山積めるからです。自分で能力をつけて目の前の誰かを支えるということは、重圧にもなりますが、他ではできない経験で、社会人としても非常に大切な考えだと思います。 |
T.K.さん もちろん、勧めたいです!理由は以下の3点です。①丁寧な研修と実践の中で発達障害やABAについての知識を身に付けられるため、②お子さんの成長を、保護者の方や他のスタッフさんと一緒に喜んだりやりがいを味わえるため、③「障害の有無に関わらず全ての人が自分らしく生きる社会を創りたい」という共通のビジョンを持った仲間に出会えるためです。 |
Q10. これから学生セラピスト部に参加したいと思っている人へのメッセージをお願いします。 |
K.Y.さん 一緒に楽しい時間や様々な経験を作っていきたいです! |
M.S.さん 実際にやってみないと分からないことや、大学やいる環境が違う様々な人との交流の中でしか得られない気づきが沢山あると思います。一緒に充実した素敵な時間を過ごしましょう。 |
T.K.さん 新しいことを始めるのは勇気のいることだと思いますが、一歩を踏み出した先にここでしか得られない経験や同じ志を持つ仲間がいます!皆さんが学生セラピスト部に加わってくださることを楽しみにしています! |
この記事はADDSにご寄付してくださっている方、過去にご寄付をしてくださった方を対象にお送りしている活動報告メール「ココダケマガジン VOL. 1」のために作成されました。